企業から寄せられた声(文字情報)

森松工業株式会社

会社概要

所在地: 岐阜県本巣市
業種: 製造業
資本金: 2億8,0000万円
従業員数: 670人
URL: http://www.morimatsu.jp/

訓練概要

訓練コース: パネルタンク製造コース
職種: 技能工
訓練生数: 5人(終了後に全員を正社員採用)
期間: 平成25年12月~26年3月
訓練種別: 若者チャレンジ訓練(キャリア・アップ型)

1.制度の活用に取り組んだ目的

岐阜県本巣市にある社屋の正面
岐阜県本巣市にある社屋の正面

 当社は、昭和22(1947)年に創業し、今年で68年目を迎えました。現在では、建築設備関連や上水道事業で利用される各種の水槽と圧力容器、熱交換器などを設計・製造・販売するメーカーであり、工事業者でもあります。その加工技術を活かして航空機やロケット部品などの大型の金属製品の加工なども手がけています。中でも、主力製品のステンレスパネルタンクは、国内でトップシェアを誇っています。
 このステンレスパネルタンクは、全溶接構造のために、耐震性と水密性、安全性、衛生性などに優れており、飲料水向けの水槽を中心として、様々な用途に採用されています。また、お客様のニーズにオーダーメイドで対応するために、工程の多くは、熟練した技能工による手作業で行う必要があります。
 当社の製品は、これまでに全国各地に納品してきましたが、平成23(2011)年3月11日の東日本大震災のときの強い震度にも耐えた製品が多くありました。こうした理由から、当社の製品の耐震性の高さがお客様に再評価されたこともあり、受注が大幅に増加したために、技能工の慢性的な不足に悩んでいました。
 このような状況のもと、岐阜労働局の担当の方から、企業と求職者とをマッチングさせるために有効なジョブ・カード制度と、この制度を活用する企業を支援している美濃加茂商工会議所に設置されている岐阜県地域ジョブ・カードセンターを紹介されました。早速、岐阜県地域ジョブ・カードセンターを訪問し、制度普及推進員の方からジョブ・カード制度の若者チャレンジ訓練について詳しい説明を受けました。
 この説明を聞き、35歳未満の非正規労働者を対象とした若者チャレンジ訓練は、当社でも十分に活用できることが分かりました。そこで、当社の教育制度と若者チャレンジ訓練を併せて活用することにより、新たな技能工を育成することにしました。
 この訓練の対象者には、既に雇用していた若年者の有期契約社員に加え、ハローワークなどの求人を通じて新たに採用する方、いわゆる未経験者も含めました。この中には、正社員登用にふさわしい技能を身に付けることができないまま、様々な分野の職業を転々としてきた方もみられました。
 当社では、溶接工の職人には新規学卒者を採用しており、中途採用の場合でも、経験のある方、いわゆる「即戦力」となる人材を採用してきました。このような当社の従来からの採用方針から考えれば、正社員雇用を躊躇せざるを得ないような方についても、若者チャレンジ訓練の訓練生として思い切って採用しようと決断できました。それは、彼らを正社員として育成するためのコストを当社が負担することになったとしても、優秀な技能工の確保が容易ではない労働市場の現状を踏まえると、未経験者である彼らを採用し、社内で一から教育することによって優秀な技能工に育てるという、もう1つの人材確保の手段があってもよいのではないかと考えたからです。

2.具体的な取組内容

OJTの実施風景
OJTの実施風景

 訓練カリキュラムの作成は、当社として初めての取り組みでしたので、制度普及推進員の方からのアドバイスを参考にしながら、製造部門の担当者からの現場の業務に沿った実践的な内容を盛り込んでほしいといった要望も反映させるようにしました。このため、基礎的な内容から、次第に実践的な技能の習得が進むように段階的な内容として仕上げました。
 465時間のOJT(実習)では、ステンレスパネルタンクの製造を訓練カリキュラムに設定し、製造に必要なTIG溶接(電気を使用した溶接の一種)と加工組立(切断、研磨、機械加工、保温、コーキング、酸洗)を具体的な訓練内容として盛り込みました。このように、実際の製造現場に必要な業務に特化することによって、訓練生の技能の専門化を早期に進めるように工夫しました。
 また、55時間のOff-JT(座学等)では、「安衛則§39に基づく特別教育」を訓練カリキュラムに取り入れ、OJTで実施する訓練を補完する内容として計画しました。このうち、「第2種酸素欠乏危険作業者(酸素欠乏症、かつ硫化水素中毒となる恐れがある場所での作業)」と「特定粉じん作業者」は、ステンレスパネルタンクの製造工程の中でも、場合によっては命にかかわる大きな危険を伴う作業ですので、製造部門の教育担当者の指導のもと、しっかりと教育するように心がけました。また、習得の進捗状況が思わしくない訓練講生については、訓練の時間とは別メニューを設け、習得できるまで教え込み、理解させるように留意しました。
 当社で実施した若者チャレンジ訓練は、4カ月間という比較的短い期間でしたので、訓練生にとっては、専門的な内容を短期間に習得しなければならなかったために、大変だったと思います。しかし、訓練の指導者を務めた2人の先輩社員は、前向きであり、安全な作業に配慮できる考えをもった優れた現場の指導者です。こうした指導者などから熱心な指導を受けたことは、5人の訓練生にとっては、貴重な経験となったようですので、今後の業務によい影響を与えていくと確信しています。

3.阻害要因とそれを乗り越えるための工夫

JIS溶接試験に向けての訓練風景
JIS溶接試験に向けての訓練風景

(1)今回実施した若者チャレンジ訓練は、4カ月間にわたる比較的短期間でしたが、密度の濃い訓練内容でしたので、5人の訓練生が耐えられるかどうか心配でした。しかし、製造部門と人事部門とのそれぞれの担当者が連携したことによって、スムーズに進めることができました。
 訓練内容の習得の進捗状況については、製造部門の担当者の評価を訓練の担当者が定期的にヒアリングしました。その結果、習得の進捗状況が思わしくない訓練生に対しては、人事部門の担当者によるキャリア・コンサルティングやメンタルヘルスケアを実施するなど、サポート体制の充実に努め、訓練生を成長させるために全面的に支援しました。
(2)制度普及推進員の方と当社の人事部門の担当者が緊密に連絡をとり合い、訓練の進捗状況を確認しながら、若者チャレンジ訓練を実施しました。
 こうしたやりとりは、電話やメールなどで適宜、アドバイスや連絡をしてもらうなど、きめ細かなサポートをしてもらいましたので、安心して訓練を進めることができました。

4.制度の活用による具体的な効果

 今回の若者チャレンジ訓練を実施した感想は、以下のとおりです。
(1)訓練の開始前には、5人の訓練生の候補者(有期契約社員)に対し、自分自身のキャリアを形成する重要性について説明したうえ、若者チャレンジ訓練の受講の希望の有無を打診したところ、全ての候補者が快諾してくれました。訓練の受講によって正社員登用への門戸が開けることに喜びを感じ、安定した将来を築くためにも、技能を磨こうと決意してくれたようです。
 訓練の開始以降、5人の訓練生は、OJT、Off-JTともに積極的に取り組み、訓練カリキュラムに盛り込んだ科目の習得に一生懸命努力し、必要な技能の習得に日々研鑚してくれました。彼らは、訓練を通じて会社はもとより、社会にとっても必要な人材になろうという志を抱いているのがよく分かりましたので、訓練の開始前と終了後の変貌ぶりに思わず胸が熱くなりました。
(2)制度普及推進員の方からは、若者チャ レンジ訓練のほかにも、ジョブ・カード制度の有期実習型訓練や実践型人材養成システムといった訓練の実施についても、手厚く支援してもらいましたので、その後も、多くの訓練生を正社員として雇い入れることができました。
 また、上記の訓練に刺激を受けたために、興味や関心を示す社員も増えましたので、ジョブ・カード制度の活用とは関係なく、現在では、社内での様々な教育訓練が進んでいます。
(3)当社では、これまでに企業規模を拡大してきましたが、人材育成の仕組みを全社的にどのように構築していくべきか決めかねていたところがありました。
 しかし、ジョブ・カード制度の活用を契機に、当社独自の人材育成の仕組みを構築するためのヒントを得ましたので、優秀な技能工の継続的な育成への道が拓けたと実感しています。社内では、人材育成の重要性を共有し、醸成できたうえ、ついには、社内に認定職業訓練校を本年4月に開設するメドが立つまでになりました。
 「事業は人なり。」というように、企業というものは、社員の能力の総和以上には成長しません。これからも、社員を採用するときは、岐阜県地域ジョブ・カードセンターの制度普及推進員の方のご協力を得ながら、有期契約社員の正社員化のためにジョブ・カード制度を積極的に活用していきたいと考えています。

5.元訓練生に対するフォローアップ

 今回の若者チャレンジ訓練の実施を通じて分かったことは、これまでに正社員経験の少ない訓練生のやる気を引き出すためには、非金銭的なインセンティブ、具体的には、社外でも十二分に通用する技能を身に付けさせることが重要だということです。
 「時間とコストをかけて技能を身に付けさせた途端、退職されるのでは・・・。」という懸念も、社内にはありましたが、以下のような対策が奏功したのか、現在でも、1人の退職者も出ておらず、元気に活躍しています。
 彼らは、経験者に比べて技能の習得に時間を要しますが、真摯な態度は周囲の社員にも敏感に伝わりましたので、徐々に信頼を得つつあります。当社としても、業務に必要であり、社外に出ても十二分に通用する資格講習などを複数受講させています。
 併せて、OJTでは、最も面倒見のよい職長に指導させるとともに、人事部門の担当者によるキャリア・コンサルティングやメンタルヘルスケアを適宜実施し、元訓練生に対して正社員にふさわしい技能と情意(意識と態度)を身に付けさせるために万全のフォローをしています。 こうした活動を通じて、今後もより多くの正社員登用を目指したいと考えています。

(平成27年1月現在)

若者チャレンジ訓練の概要

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有期実習型訓練の概要