企業から寄せられた声(文字情報)

有限会社原田左官工業所

会社概要

所在地: 東京都文京区
業種: 左官工事、タイル貼り工事、防水工事、組積工事
資本金: 4,800万円
従業員数: 38人
URL: http://www.haradasakan.co.jp/

訓練概要

訓練コース: 左官工事実践科コース
職種: 左官業
訓練生数: 4人(終了後に3人を正社員採用)
期間: 平成25年4月~7月
訓練種別: 有期実習型訓練(基本型)

1.制度の活用に取り組んだ目的

OJTの実施風景
OJTの実施風景

 当社は昭和24年4月に創業し、昭和47年4月に現在の有限会社に組織変更しました。事業を実施するうえでの目的としては、①職人を守る、②伝統技術の継承・発展、③幸福(しあわせ)の創造を掲げています。
 当初は、左官の仕事だけを受注していましたが、お客様からのご要望を踏まえて、タイル貼り工事と防水工事も徐々に受注するようにしました。現在は、ブロック積みや防水・タイル工事も施工していますので、当社の職人(社員)は「多能工化」しています。
 現在、社員は、38人(外注先を含めると46人)います。その特徴としては、①女性の職人(7人)を採用し、育成している、②若い人が多い、ということです。この業界の現状をみると、「高齢化」と「職人不足」「仕事の減少」ということが課題となっており、平均年齢は60歳といわれている中で、当社にいる46人の社員のうち、20代が8人、30代が18人と、20代と30代の社員が全体の6割弱を占めています。
 このような状況のもと、ジョブ・カード制度の有期実習型訓練を実施したきっかけは、下記のとおり、3つありました。
 1つ目は、現場での仕事が忙しいために、これまでは、人材を育成できなかったということです。育成したいという気持ちはあったのですが、現場での仕事が忙しいと、どうしても教育は後回しになってしまいました。暇なときだけOff-JTを実施するといったことでは、十分に教えることができません。
 2つ目は、人材を育成する気持ちがあるならば、日程を決めてきちんと実施しようということでした。「初めに申請ありき」とし、育成担当者(指導役)と日程を決めることにすれば、社内の全員が覚悟を決めて実施できます。つまり、「たとえ現場での仕事が忙しくても、決めた日は必ず教育する」ということでした。
 3つ目は、職人(社員)を育成するための訓練カリキュラムを作成し、日程を決めることによって、1つの現場としての予定を組んだということです。このような「縛り」があったことによって、初めての経験でしたが、無事に終了できたと思います。

2.具体的な取組内容

 当社で実施した有期実習型訓練は、昨年4月から7月末までの4カ月間でした。4人の訓練生は、ハローワークを通じて募集し、終了後は、このうち、3人を正社員として採用しました。平均すると、1カ月当たり90時間の訓練となり、当社としては、これまでに実施したことのない長期の訓練期間となりました。
 OJTは、①安全衛生と②搬入・段取り作業、③清掃・片付け作業、④下地塗り補助、⑤仕上げ塗り補助・タイル貼補助で構成し、448時間としました。また、Off-JTとしては、①安全衛生、②職業能力基礎講習、③左官工法の基礎知識、④能力評価、⑤段取り作業実技、⑥左官作業基本、⑦左官作業基本実技を112時間にわたって実施しました。OJT、Off-JTの育成担当者(指導役)は、4人の社員が務め、その間の仕事は、他の社員がフォローしました。
 実施するに当たっては、東京商工会議所に設置されている東京都地域ジョブ・カードセンターの制度普及推進員の方から、訓練カリキュラムと評価シート(ジョブ・カード様式4)などの作成支援や懇切丁寧なアドバイスがありましたので、非常に助かりました。このような支援やアドバイスがなかったら、当社単独では実施できなかったのではないかと思います。

3.阻害要因とそれを乗り越えるための工夫

ビデオで自分自身の塗り方を確認
ビデオで自分自身の塗り方を確認

 昔は、見て、仕事を覚えるのが当たり前でした。つまり、先輩社員の仕事ぶりを盗んだ(見習い)わけです。
 しかし、現在では、教えることが必要です。このため、ビデオ放映を使用した現代版の見て習う「モデリング」という訓練を実施しました。これは、本来の「見習い」の姿といえます。
 具体的には、名人といわれる一流の職人(社員)の壁の塗り方をビデオに収め、それを繰り返し見させて、一流の動きを分析し、真似るようにさせます。これは、作業の手順や回数を見ることによって、塗り方を早くマスターできるといったメリットがあります。
 このようなモニタリングは、効果が絶大でした。訓練生(見習い工)は、短期間に塗れるようになりましたので、OJTでも活かせたうえ、仕事の面白みも分かるようになったようです。また、訓練生(見習い工)の塗り姿もビデオで撮影し、一流の職人(社員)との動きの違いを認識させ、iPadやノートパソコンを使用して動きの違いをその場で確認させ、修正させました。
 仕事は、現場で行いますので、予定がずれたり、天候によって組み替えが発生したことから、訓練カリキュラムどおりに進めるのが大変でした。しかし、東京都地域ジョブ・カードセンターの制度普及推進員の方から育成担当者(指導役)を務めた社員に対し、訓練の内容と指導方法などについて事前に説明してもらっていましたので、臨機応変に対応できました。やはり、会社の代表者だけでは、訓練を進めることができませんので、社員に対する事前の説明が必要だということを実感しました。

4.制度の活用による具体的な効果

OJTの実施風景
OJTの実施風景

 今回の有期実習型訓練を実施したことによって、社内に教える環境が整ったと思います。訓練を実施したお蔭もあり、職人(社員)を育成するための取り組みが評価され、東京都の「中小企業人材育成大賞」と厚生労働省の「キャリア形成支援企業表彰」の2つの賞を受賞することができました。
 また、有期実習型訓練を実施して感じたことは、下記のようなことです。
 まず、見習い工については、従来は「自分で聞いた」「盗んで覚えた」「下働きが長いので、根性が身に付いた」「個人の技量の差が大きかった」「コテを持つまでに数年かかり、育成に時間がかかった」という状況にありました。しかし、訓練を終了した後は、「教える、教わる」「1年目で塗れるようになるので、仕事の面白みが分かる」ようになりました。
 また、育成担当者(指導役)は、従来は「教えるレベルがバラバラ(自分の好きなように教える)」「Off-JTの研修がない」「自分が教わったやり方しか知らない」「仕事ができない人に対しては、いつまでも教えない」という状況でした。訓練の終了後は、「日報(訓練日誌)のやりとりと話をする機会が増えたので、コミュニケーションが良好になった」「育成担当者(指導役)が仕事の見直しを行ったので、レベルが上がった」「一定のレベルで塗ることができる見習い工が現場にくるので、手取り足取り教えるOJTもスムーズに進む」ように変化しました。
 有期実習型訓練を実施した成果としては、①一定レベルの見習い工を短期間に育成できた(下働きだけでなく、塗ることが多少できるので、すぐにOJTに入れ、現場でも役立つようになった)、②社内のコミュニケーションが良好になった(人材の育成について活発な意見が出るようになった)、③社員教育に注力している会社の姿勢を社員が理解している、ということです。
 しかし、見習い工は、教えてもらうのが当たり前と考え、待ちの姿勢になりやすいので、自分から覚える、技術を磨く姿勢を植え付けるにはどうするかということが課題といえます。加えて、管理部は、社内では個人商店のようにバラバラなやり方をしていますので、今後は、職人だけではなく、管理部の社員を育成する訓練カリキュラムを作成したいと考えています。

(平成26年3月現在)

有期実習型訓練の概要

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有期実習型訓練の概要